こんにちはねず実 (@8kMO2aHAP0g6Tpd) です。
今回は薬学生、新人向けです。
薬剤師になるまでの大学生活、色んなことを勉強しましたよね?
でも「国家試験のために勉強してるけど、実際使うの薬理と実務くらいじゃない?」と思うことありませんか?
今まで勉強してきたことが仕事にどう繋がるのか分かり辛いですよね。
今日は調剤薬局、ドラッグストアと経験したねず実が、
科目別に現場で実際に使った知識を紹介していきたいと思います。
本格的に現場に立つ前に知識の復習をしたいという方もぜひ参考に🐀
物理
しょっぱなから大変申し訳ないのですが、物理の範囲はなかなか使い機会が・・・。
保健所で検査を担当している友人は、検査などで定性試験や分光分析法など良く使うと言っていました。
調剤やドラッグで使う機会があった方はぜひ教えてください。
化学
メインは漢方薬・生薬
漢方薬、生薬の範囲はめちゃくちゃ使います!
特にドラッグストアだと「難病治療中だけど市販の漢方使ってみたい、どれがいいですか?」などその人がその漢方薬を使っても良いのか薬剤師がある程度判断しなくてはならないことがあります。
状況によってはもちろん受診勧奨をしますが、なんでもかんでも「医者に聞いてください」では学んだ意味がありません。
「この人は○○(腎臓など)が悪いからこの成分が入ってる漢方薬はだめだなー」などの最低限の判断はできるようにしましょう。
処方薬としての漢方薬ですが、「症状に合わせて前回と漢方薬を変更すると医師に言われたが、何が違うのかわからない」と言われる方は少なくないです。
添付文書にない使い方で処方される医師もいらっしゃいます。(半夏瀉心湯のうがい)
そういったときに間違った説明をしないように知識が大切なのです。
そして現場に出ると感じますが、漢方薬・生薬=副作用少なくて安全と考えている人はかなり多いです。
特に妊娠中・授乳中に漢方薬を使いたいという方非常に多いです。
漢方薬によっては妊娠中・授乳中に避けるべきものもあります。
自己判断での誤った使用をする方を少しでも減らせるよう知識を蓄えておきましょ。
化学構造とかは・・・?
「構造の中で水素原子をフッ素原子に置き換えたから安定性上がり、吸収性もアップ」などの知識は知っていないといけないのだが、そういった知識を意識して使用する機会は今のところないです(´;ω;`)
生物
器官の構造と機能
「医者にこの臓器が悪いって言われたけどそもそもこれは何してるの?」ってよくきかれる。
田舎でお年寄り多いせいもあると思うけど「お医者様には分からなくても聞きづらい」という方結構いるので臓器についても結構聞かれる。
わざわざ電話で問い合わせてくる人もいる。
薬理との組み合わせの知識になるが、人体構造や臓器について詳しく知っていた方が薬理作用を見たときに患者の体にどんな効果をもたらすか、どんな副作用が起こるのかよりわかりやすい説明をしやすい。
微生物・ウイルスについての知識
「私マイコプラズマに感染していると思うんだけど、家に余ってるセフカペン飲めば大丈夫よね?」
「カンジダだと思うんだけど家にあるゲンタマイシン軟膏使えばいいよね?」
こんな質問何度もあります。
「効きません、まず受診してください」だけでは「抗生剤なんだから菌であるマイコプラズマに効くに決まってるでしょ!」と争いになってしまいます。
こんな時に
「セフカペンは細菌の細胞壁を攻撃する薬ですが、マイコプラズマには攻撃する細胞壁が無いので効かない」
「カンジダは真菌なので、もしカンジダであれば細菌用のゲンタマイシンは効果が無くむしろ悪化させてしまう」
などの理由をサラッと言うことができれば受診勧奨もスムーズです。
衛生
栄養素
ドラッグストアに勤務すると、当たり前ですが調剤専門の薬局より薬以外の質問や問い合わせが爆増します。
健康志向が高まり、市販のサプリメントの種類もますます増えているので
ビタミン・ミネラルそれぞれが具体的にどういった効果があるのかはよくきかれます。
欠乏症・過剰症についての質問も多いのでおさえておきましょう。
特にビタミンB群は質問が多い印象です。
<知識を生かした例>
痛みとしびれがあるけど新型コロナが怖くて受診はしたくない。
⇒既往歴や併用薬などを聞きだした上で痛み止めと神経の治りをたすけるメコバラミン(ビタミンB12)の市販薬を勧めた。
栄養素を一日にどれくらい摂れば良いかもよく聞かれます。
大まかな量は覚えておいて損はありません。
食品添加物
気にする人は気にするけど気にしない人は気にしない。そんな存在。
表示が省略されるものも多いけど、時々成分名が表示されていて「見慣れない成分が入っている、食べても大丈夫か?」と聞かれることはある。
添加物という存在を目の敵にする人は以外といらっしゃるのでちょこちょこ聞かれる。
有名な話だが、ペットボトルの緑茶に入っている酸化防止剤のビタミンCは「アスコルビン酸ナトリウム」という形になっている。
このナトリウムが高血圧治療中などのナトリウム制限中の患者には良くない。
普通に飲む程度なら問題ないとは言われているが、水分を多めに摂ろうとこのペットボトルの緑茶をリットル単位でがぶ飲みするのは止めたほうが良いだろう。
化学物質による中毒と処置
「子供がタバコを飲み込んだ!」という問い合わせの時にあなたはすぐに「水分は摂らせないで」と言えるでしょうか。
状況に応じて様子見の指示や救急車や病院の手配も重要ですが、その間にやってはいけないことの指示も大切です。
実際に聞いた話ですが、薬剤師が「すぐ救急隊員が行くから水を飲ませちゃダメ」といったら、
子供が苦しそうだから何か飲ませないとと牛乳を飲ませてしまった方がいたそうな。
(この場合、タバコを吐かせる目的で飲み物を飲ませる場合もあるそうですが上手く行かないこともあるのでできればすぐ受診を。)
都会ではなかなか使う機会が無いとは思うけど、田舎の農家だらけの土地にいくと農薬の誤食についての問い合わせはたまにある。
特に高齢化が進んでいる地域だと、子供より認知症の高齢者による誤食が多い。
誤食したものによってはその場で応急処置が可能だったり、一刻も早く救急医療が必要だったりするので最低限の知識は忘れないでおこう。
「公財)日本中毒情報センター」にまずダイヤルしてもいいけど、自分が知っていた方が話が早い。
廃棄物
法規と重複するが、廃棄物の区分、取り扱いは必須。
非感染性廃棄物、感染性廃棄物、特別管理産業廃棄物とか。
廃棄物をとりあえずテキトーにゴミ箱に捨てたりしたらダメダヨ
授業聴いているだけではいまいちピンとこなかった産業廃棄物管理票(マニフェスト)、現場に行けば見られるよ。とっても大事なもの。
薬理
薬剤師の脳みそは薬理でできている。
メイン知識ですね。
ちゃんと理解しているかしていないかで服薬指導の説明のわかりやすさが変わると個人的に思っています。
就職してから薬理で学び直したところは、「作用時間の長い、短い」、「同種同効薬での副作用起きやすい、起きにくい」です。
同効薬の間で処方変更があった時に、「同じ作用の薬なのになぜ今回こちらに変更になったんですか?」と聞かれることは珍しくないです。
そういったときに作用機序についてきちんと理解していれば、
「こっちの方が作用時間が長い」、「最近追加になった別の薬の副作用を増大させる危険がある」などの説明がスムーズに行えます。
わかりやすい説明というのは自分が理解していないと難しいのです。
薬剤師になっておいてアレですが、ねず実は学生時代薬理がすっごく苦手でした。
「β2受容体刺激薬はGsタンパク質を介してアデニル酸シクラーゼを活性化し、cAMP産生を亢進するから気管支平滑筋を弛緩させる。」って覚えにくいんじゃ!
6年生になって病態・薬治と一緒に病気や症状に重ねながら学んでようやく克服。
作用機序が招く体の変化も意識しながら勉強すると薬理はわかりやすいと思います。
薬剤
薬物動態
実は嫌というほど使う。
薬物動態に関しては添付文書やインタビューフォームにまとまっているものを使用するのですが、この表をちゃんと読めることが大事。
例を挙げると
医師からは「薬の切り替えをしたいがこの薬はどれくらいで体から抜けるのか」といった問い合わせが来たり
患者からは「この薬を飲んでいる間は○○を食べないよう言われていましたが、飲み終わってどれくらい経ったら食べてもいいですか」といった問い合わせが来たり。
あと併用注意について具体的な薬剤名で書かず、「CYP3A4により主に代謝される薬剤」などと書かれているケースでも薬物動態の知識は必要。
もちろん調べるのが一番確実ではあるが、この時に頭にすでに情報があるかないかで作業のスピードも変わってくる。
P-糖タンパク質で排出される薬をP-糖タンパク質を阻害する薬と併用すると体内濃度が変化するのだが、意外とこの項目は見落としがち。
薬によってはこれが重大であったりするので添付文書を見る時にちらっとでも目を通しておこう。
病態・薬物治療学
全体的に
正直言って現場で一番使っている科目。
症状の起こる仕組みが理解できるとなぜその処方内容なのかがわかりやすい。
ドラッグストアに勤務しているのでもちろん市販薬の相談を受ける。
薬剤師なので診断はできないけれど、症状から「だいたいこの病気なのかな~」と見当つけて市販薬で対応できそうなら薬剤師の判断で薬を勧めたりする。
検査値
薬を渡す際、薬の説明だけでなく血糖値や血圧値などの検査値も薬の効果確認のため可能なら聴き取る(薬剤師にきかれると怒る人も多いから相手をみてきこう)。
この時に検査値について質問してくれる人もいる。
「この項目って何?」、「今回の数値はいいの?悪いの?」など内容は様々だが、
検査値の質問についてはサッと答えないと「調べないとわからないなら言わなくていいです!」となるケースが多いように感じられる。
「こんなこともすぐ答えられないなんて薬剤師って本当に馬鹿なんだね」←何度言われたことか( ノД`)
検査値については現場に出る上で最低限必要な知識だと思って、「検査値が示すこと」、「おおまかな基準値」、「数値の上下で考えられる疾患」については覚えておこう。
検査値がすぐわかるスマホアプリやハンドブックもあるようですが、患者の前で何かを調べること自体嫌がる人多いので注意。「調べる人」=「無知で信用できない」となるようです。田舎コワイ
症状の聴き取りで処方変更
「実は言いづらくて医者には言ってないんだけど…」こんな感じで後出しで症状を訴えたり、隠していた併用薬が後から分かったりといったことはよーくあります。
この時に症状が薬の副作用の可能性があるのか、併用薬は継続で問題ないか考えるのは薬剤師の役目です。
問い合わせの結果薬が中止になったり、処方内容が変わることがあるので、そんな時勉強してよかったと思えます。
薬の作用機序とそれによって起こり得る症状が結びついているからこそ下せる判断です。
疾患と起こり得る症状を知らないと服薬指導や症状の聞き取りが見当違いな内容になる恐れがあるのでこの範囲は将来を意識して勉強してね。
法規・制度・倫理
管理薬剤師になるなら必須科目!
毒・劇物の取り扱いとかね。
あと向精神薬の処方日数の制限とかは気にせず処方する医師が多いので注意。
処方箋や調剤録の保管期間も現場では大事。
大事な内容ばかりだが以下に例を挙げてみる。
毒薬・劇薬、毒物・劇物
すごくややこしい範囲だけれど大事な内容。
鍵をかける、かけないとか。
譲渡の際に書類の提出が必要とか。
場合によっては通報が必要なケースもあるのでこの辺の決まりは覚えておこう。
苛性ソーダ購入希望だが、身分証は絶対見せないし使用目的も絶対言わないやつとかいるからね
麻薬及び向精神薬取締法
「今度海外に行くんだけど、この薬って持っていていいのかな?」
こんな質問が来たら気をつけよう。
薬によっては許可をもらう場所が違ったり、書類が色々必要だったりする。
こんな時にアドバイスできるとかっこいいね。
薬の廃棄
薬によっては廃棄方法が決まっていたり、保健所職員の立ち合いが必要。
うっかりゴミ箱に廃棄しないためにこのへんもしっかり理解しておこう。
保険制度
これも現場に出てから大切さを実感する内容。
高額療養費制度とか薬局に問い合わせる人もけっこういるからね。
あと施設や在宅やってる薬局だと適用される保険によってとれる加算が変わったりするから保険についてより知ってないといけない。(医療保険なのか介護保険なのかで変わる)
実務
実務という名の通りそもそも現場を現した科目。
用法用量
用量用法の項目は必須。まあねず実は結局働きながら覚えていったけど。
処方箋たくさん見ていくうちに覚えていくけどあらかじめ頭入ってると強い。
食前食後、空腹時の記載ミスは処方箋でよくあること。
あと初回なのに維持量が処方されているとか。
肝・腎疾患時の用量設定も非常に大切。
医師が減量を考えていても、処方箋に前回と同じ内容をそのまま印刷してしまったということもあるので
検査値をみて減量したほうが良い薬を見逃さないようにしている。
代表的な医薬品の警告、禁忌、副作用
すごく大事な範囲だし、試験問題では解けるはずなのになぜか現場だと時々見逃されることがある。
例えばフェニトインの歯肉増殖をただの歯ぐきの腫れと思いこんで悪化させてしまったりね。
併用注意や併用禁忌の項目も学生のうちにしっかり覚えておこう。
お薬手帳を見ると別の病院で併用禁忌の薬が出ていた・・・こんな時に気づけるのはそのお薬手帳を見ているあなただけです。
(例:カリウム製剤服用中にカリウム保持性利尿薬が他院で処方)
服薬指導
実務の範囲では薬剤ごとの服薬指導内容についても学びます。
吸入ステロイド薬による嗄声や副作用回避にうがいが必要など。
服薬指導において外せないポイントになるので、現場に出る前に復習することを勧めます。
最後に
いかがでしたか。
薬剤師資格は何年にも渡る勉強の集大成です。
いま勉強している内容が仕事にどう繋がるのかがわかると学びやすくなるのではないでしょうか。
皆さまの薬学生、薬剤師ライフの重圧が少しでも軽くなりますように願っております🐀=3