ねず実です。
今回は医療従事者ではなく患者さん向けの記事です。
先に説明しておくとねず実は薬剤師をしております。
薬局を利用するときによく
「大して仕事なさそうなのに何でこんなに待たされるの?」
と思いませんか?
ねず実はよく「処方箋通りの薬取り出すだけなのに15分も待たせるなんて!」と怒られます。
薬局の中は患者側からするとブラックボックスみたいな感じなので、
一体何をしているのかモヤッとされる方も多いかと思われます。
なので、
今回は薬局を利用する皆様が少しでも薬局で待つという状況を受け入れられるように
私達が処方箋を受け付けたあと何をしているのか書き連ねたいと思います。
皆様の薬局での待ち時間が少しでも心穏やかになる助けになれば幸いです。
- 今回登場する薬局について
- 処方箋を受け付ける
- 処方箋の不備で問い合わせ作業もある
- 薬はすぐには集められない
- 薬を集める、でもその前に
- よし、集めよう
- 早く薬をお出ししたい!
- 薬は渡して終わり?まだまだあるよ!
- どうしても薬剤師と話したくない!薬局も行きたくない!
- おわりに
今回登場する薬局について
・調剤併設型ドラッグストア
・門前の病院は無い
・チェーン店
・近隣の病院だけでなく色々な地域からの処方箋が来る
・うちの会社と関係のない地元の個人薬局たちから薬を譲って欲しいとよく依頼があるくらい在庫は多い方。
処方箋を受け付ける
処方箋を受け取ったらすぐ記載されている薬を取りに行くわけではありません。
処方箋をデータ化する作業があります。
調剤事務又は薬剤師が行います。
レセプトコンピュータ(レセコン)と呼ばれる専用のソフトが入ったパソコンで行われます。
処方箋の内容をデータ化する時に、保険証があれば処方箋の保険番号や期限など問題ないかも確認しています。
このデータは定期的にまとめて組合健保や協会けんぽ、市区町村などの健康保険の保険者に送っています。
この時のデータが誤っていると薬局にお金が入ってこなくなったりします。
3割負担の方は当たり前ですがお会計の3割を薬局に支払います。
では残りの7割は?...この保険者たちからから支払われます。
なのでこの時の入力作業は急いでミスをしたりすると後が大変なのでしっかりと行います。
また公費を使う方の場合、同じ処方箋の中でも公費対象の薬と公費使えない薬があったりして病院に問い合わせが必要なケースがあります。
病院も忙しいのですぐには返答がいただけません。
以上のようなことから、薬を集める前に時間を頂いてしまうのです。
処方箋の不備で問い合わせ作業もある
病院側で処方箋を発行する際に処方箋内容の入力忘れが起こることがあります。
例えば「お薬の日数が0日分処方になっている」、「薬の名前だけで飲むタイミングの指示が書かれていない」など。
このような場合薬剤師の判断で勝手に日数やタイミングを決めることはできません。
これは患者側が「医師から○日分と言われた」と主張したとしても薬局は病院に問い合わせる義務があります。
皆様も知っている通り病院スタッフはとても忙しいです。
すぐに回答頂けないときもあるのでここで作業が止まってしまう処方箋もあります。
薬はすぐには集められない
ミスを防ぐためにデータ化された処方箋の情報と実際の処方箋を比較するダブルチェックの作業があります。
何か薬剤師が紙とにらめっこしてる姿を見かけるかもしれませんが大切な作業です。
最初にデータを入力してくれる方はもちろんミスが無いよう努力しています。
けれど、すべての物事において絶対はないので、ダブルチェックでさらにミスを防ぐようにするのです。
薬によっては特定の講座を受け、さらに登録を受けた医師しか処方できない薬があるので
そのようなお薬が処方された時は処方医がその薬を処方しても良いのか専門機関に問い合わせることがあります。
その後、処方箋に飲み合わせの悪い薬の組み合わせはないか、お薬手帳に一緒に飲んではいけない薬が記載されてないか確認したりします。
問題があれば病院に問い合わせ、薬を変更してもらったり、問題ないことを確認します。
「病院が決めたことに薬剤師が口を出しても意味ないから、そんなことより早くして」という人は多いですが、このために薬剤師はいるのです。
薬物治療の専門家として患者だけでなく病院に情報を提供することも仕事です。
また患者側が言い辛くて医師に言わなかったことが実は薬物治療に甚大な影響を及ぼすこともあります。
そういったときに薬剤師が仲介役となって医師がより正確な情報を知る手助けをします。
他にも沢山ありますが、薬を集める前にだいたい上記のような作業が入ります。
悲しいかな今の法律では薬剤師は処方箋の内容変更についてはほぼ権限はありません。
なので何かしら変更してほしいことがある場合は基本病院への問い合わせがどうしても発生します。
薬を集める、でもその前に
後は薬を集めるだけ!・・・となればいいんですが、薬局は某巨大倉庫さんと違い在庫の種類は限られています。
自分の薬局も薬は1300種類程度ありますが、医師は患者の症状に合わせて色んな薬を出すので必ずしも薬が薬局にあるとは限りません。
また医師、患者によってジェネリックのメーカーにこだわりがあったりするので、同じ成分の医薬品はあっても特定のメーカーの商品が在庫になかったりします。
こういう時、カウンターの奥で私たちは足りない薬がいつ揃うのかお薬の卸業者に確認したり、チェーン薬局であれば近隣の店舗の在庫を分けてもらえないか頼んだりしています。
この確認作業でさらにお時間を頂きます。
(ここで在庫が早く揃うであろう門前薬局に移動していただくこともあります。)
昨今地震や某ジェネリックメーカーの不祥事などの影響で色々なお薬の供給が不安定になっております。
薬が今すぐほしいと思っているのは薬局も同じです。
欲しいものがすぐに手に入る状況ではないことをご理解ください。
薬剤師も情報収集をして変わりの薬などを医師と話しあうなどの対策をして皆様の薬物治療が滞ることの無いよう努めているのです。
よし、集めよう
いよいよお薬集め。
スタッフが多い薬局では上記の確認作業に並行して先に薬を集めることもできますが、
スタッフの人数によってはそういうことは難しい。
「○人もいれば余裕でしょ!」とカウンター越しに怒鳴る方もいますが
ちんたらしてそうに見えても実は急いでいます。
仕事内容が見え辛いので、パソコンみたり電話してたり対して動いてなさそうに見えるかもしれませんが急いでます。
薬を間違えの無いよう量揃えたら終わりではありません。
・塗り薬を複数種類混ぜる処方であれば混ぜる作業があります。
・錠剤が飲めない方であれば錠剤を潰して粉々にして均等に分ける作業があります。
・十数種類飲む薬がある方は一日分ずつ袋にまとめて入れる一包化という作業があります。(日数によって時間は驚くほど伸びます)
上記の作業だけでなく色んな作業があります。
これらの作業を一つ行うのに薬剤師が一人持ってかれます。
そうなると残りの人数で後の仕事を回します。必ずしも「○人いうから余裕だろう」というわけではありません。
また患者によって「塗り薬は◯gずつ別瓶に分けて、それぞれに~って書いて、見やすいよう赤色と青色にそれぞれ線を引いて~」などこだわりのある方もいます。
そうなると作業量はさらに増えます。
状況を見てお薬をお渡しする順番を変えたりしますが、基本的には順番に対応するので「これだけしか処方されていないのに遅い!」という状況はどこかでは発生してしまいます。
早く薬をお出ししたい!
「早く薬を渡したい!」これは本音です。
でもやっとそろった薬を出す前にもういくつか作業が有ります。
まずは「監査」。集められた薬の数が正しいか、違う薬を誤って持ってきていないか最終確認をします。
粉薬や塗り薬、シロップ剤などは異物が混ざってないか見ます。
最後に「薬歴確認」。
薬局と病院の間で患者さんについての情報のやり取りはほぼありません。
薬剤師は処方箋と患者さんの話から症状について把握しなければなりません。
ではどうやって治療経過を把握しているかというと、
患者さんから聞いた話や処方箋の内容から症状の経過を読み取ったり、治療方針を把握してそれらを「薬歴」というカルテのようなものに薬剤師が毎回まとめています。
お薬を渡す前にその薬歴を確認することで、
患者と薬と症状についてスムーズに話せるよう予めある程度情報を整理できます。
お薬をお渡しする前にこの「薬歴」を確認して、
「前回きいた内容からすると今回の薬の内容の変更は不自然だ」
「今回は薬を変更する予定だったはずだ」など確認すべきことを整理しています。
薬は渡して終わり?まだまだあるよ!
薬を渡しても薬剤師の仕事は終わりません。
混んでる日は今まで紹介したような流れで延々お薬を渡し続けますが、
その日薬を渡した人全員分の薬歴を書かなくてはならないのです。
薬局でのお会計には薬代以外に色々なものが入っていますが、その中に「薬歴などを使って皆様のお薬を管理しています代」が入っています。
どのように書いているのかは割愛しますが、この管理しています代は薬について説明したり、薬歴をきちんと書いていること前提で頂いてます。
何度もお伝えしますが、医師から薬剤師に対して患者さんやお薬に関する情報はほぼ与えられません。
また、薬剤師から医師に薬歴を書くために病状を問い合わせることは原則しません。怒られます。
皆様にいちいち症状や薬について聞いているのはより良い管理を行うために大事なことなのです。
あなたの症状を馬鹿にするためにきいているわけではありません。悪用するためでもありません。
少しだけお話を聞いてください。
どうしても薬剤師と話したくない!薬局も行きたくない!
今まで薬局での薬剤師の作業内容を簡単に説明しましたが、それでも薬局嫌いのままの人は多いでしょう。
しかし保険診療を使い、保険適用で安く薬が欲しいなら薬の管理に協力してほしいというのが本音です。
でもそれでも説明はいらないと言う人はいます。
「自分の薬だから自分で管理できます。薬局に行かずに薬だけ欲しい。」こういった場合はどうすればいいのでしょうか。
日本では処方箋の薬だけ売るというのは非常に困難です。
「薬だけ」というのは実は日本ではなかなか難しいのです。処方箋で渡す医薬品は、たとえ自腹でも購入はできません。
あくまでも医師の管理下で発行される処方箋との引換なのです。
オ○サカ堂のような医薬品の海外輸入サイトを使うという手もあります。
サイトによっては処方箋を受け付けて処方箋の内容の薬を揃えてくれるところもあります。
薬局に行かなくていいので一見楽ですが、私としてはお勧めできません。
海外輸入の薬を使う場合、保険は適用されませんので例えば普段3割負担で済んでいる方も10割です。
勧められない理由はお金だけではありません。
日本で処方された薬で副作用が起きたり、何らかの事故が起きた場合は「副作用被害救済制度」を始めとした制度で治療費が降りる場合があります。
海外輸入の薬で何かしらの被害に遭われた場合は自己責任です。
日本の薬局では薬代以外に管理する代をもらっていると先にお伝えしましたが、薬局で普段から管理してもらうことで
何かあった時にスムーズに相談に乗ってもらえるのです。
「でもいつも薬局の薬剤師さん話辛くて行きたくない…」、そう言う場合は薬局を変えてみても良いかと思います。
処方箋というのは法律上どの薬局にもちこんでも良いのです。
どの薬局にも在庫があるというわけではないので事前の確認は必要ですが・・・。
おわりに
今回薬局での作業内容を紹介しましたが、「結構色々やってるんだな」と思う方もいれば、「言い訳するな早くやれ」と思う方もいるかと思います。
さらに言い訳をさせていただくと、ドラッグストア併設型の調剤薬局だと処方箋以外に市販薬のお薬相談も同時に受けているので処方箋だけに時間を割くことはどうしても難しい面があります。
わたくし個人としては皆さまが薬局に抱かれている印象は、
子育てに追われる専業主婦を楽だと決めつけているのと同じような感じなのではないかと思っております。
実際どんな働きをしているがわかればその大変さが多少わかるというか・・・。
一見楽そうであこぎな商売をしてそうに見えても実際はヒイヒイやっていたりするのです。
よく目の敵にされる業界ではありますが、少しでも厳しい視線が和らげばと思い今回の記事を書くに至りました。
どうか皆様の薬局での待ち時間のイライラが少しでも軽減することを願っております。